国連事務総長と国連憲章
国連事務総長は、国連憲章でどんな感じで規定されてるんでしょうか。
国連事務総長は国連の憲法にあたる、国連憲章(Charter of the United Nations)の第15章に規定されてます。
国連憲章は全部で110条しか条文がなくて、103条からなるうちの国の憲法と理念もまあまあ似てます。まあどちらもアメリカが主導して出来たので。
国連憲章の第15章 (Chapter XV)は、事務局(The Secretariat)について定めていて、【97条】【98条】【99条】【100条】【101条】のたった五条だけです。
今回この五つをさらっと見ていきます。
どーでもいいんですけど、憲章(Charter)と章(Chapter)って似てますよね。時々、あれっどっちだっけと混同します。ちなみに第○条はArticleで、Art.と略されます。第97条はArt.97です。
さて、事務総長でした。
【97条】で、国連事務局のボス、事務総長は「安保理の勧告に基づいて国連総会が任命する」とあります。
英語だと、
"事務総長 shall be appointed by 総会
upon the recommendation of 安保理"
となってます。
事務総長 : the Secretary-General
総会 : the General Assembly
安保理: the Security Council
です。
任命がアポappointで勧告はrecommendationとか、わりと分かりやすい単語ですね。国際法では「日本語訳よりも英語の方が分かりやすくない??」ってことがよくあります。勧告とか言われてもよく分からんけどrecommendationだと、まあ推薦みたいなもんかと想像できます。
一応、建前としては総会が事務総長を任命するみたいです。まあでも、日本の憲法でも総理大臣は国会の指名に基づいて天皇が任命するものなのでね…(日本国憲法6条1項)
国連総会は安保理の勧告を無視して別の人を事務総長に任命できるのでしょうか。たぶん安保理勧告に基づかない任命は無効だと思います。
そしたら結局総会は名前だけで、安保理が決めとるんやないかーい!と思いますがその通りです。
総会と安保理はどっちが偉いんでしょうか。微妙です。国連憲章では総会が最初に書かれてますし、憲章の社会契約っぽい理念としては総会に一番正統性がありますが、実際のシステム上は安保理の方が断然強いです。
事務総長の話に戻ります。
【98条】では、
事務総長は、総会や安保理の会議において事務総長の資格で行動して、
総会とか安保理から委託された任務を行う、みたいな感じで書いてます。
あと事務総長は事務局の活動について総会に毎年報告をするらしいです。
安保理の会議に事務総長の資格で行動できるってなんなんでしょうね…
英語だと
"事務総長 shall act in that capacity
in all meetings of 総会・安保理など"
です。
キャパ、capacityって法律用語だと資格って意味があるらしいです。知らなんだー。もともと語源は「containできる」みたいな意味っぽいです。
事務総長が安保理が仲間内でミーティングしてるところに押しかけるとかは出来ないでしょうね。安保理に呼ばれたら出れるよ、くらいのノリじゃないでしょうか。
【99条】では、事務総長が世界がヤバそうな事柄について、安保理の注意を促すことができる、と書いてます。
"事務総長 may bring to the attention of 安保理
any matter which in his opinion may threaten
the maintenance of international peace and security"
です。事務総長が注意喚起するまで安保理が気がつかない世界平和のヤバい問題なんて無さそうです。安保理が内部対立なんかで機能不全になったときに多少圧力をかけれるってことなんでしょう。安保理が無視を決め込んでるのに事務総長の注意ごときが意味あるのかといったら無さそうですが、まあそういう機能があってもいいのではという程度でしょうか。
【100条】では、事務総長は絶対中立やで!ということが書いてます。
"They (事務総長となかまたち) shall refrain from any action
which might reflect on
their position as international officials
responsible only to the Organization"
refrain fromは避けるとか控えるって感じですね。
reflect onは、名誉とか体面を傷つけるという意味らしいです。知りませんでした。
reflect がもともと、
re- :back 後ろに
flect: bend 折り曲げる
という語源らしいです。光とか反射するのも後ろに光線折り曲げる感じなんですかね。
まあ事務総長は事務局だけに所属してる人なのに、どっかの国に肩入れして事務総長の正統性をバキバキと後ろに折ってはいかんよ、ということでしょう。
今の潘基文が中国の軍事パレードに出て問題になってましたね。いかんでしょ。
【101条】は、国連事務局の職員は事務総長が任命することが書いてます。
それから、職員の雇用と勤務条件は能率と誠実を考えて決めてね、あと世界各地からバランスよく職員を採用してね、ということが書いてます。
よくネットで潘基文が事務総長になってから、コネに基づいた韓国人の採用が増えたとか書いてますね。多少はあるでしょうけど、そんなにコネコネした感じではないと信じたいですね。
たしかに韓国は血縁を中心に人との縁を大事にする社会で、今すごいことになってる朴槿惠大統領の長年の親友チェスンシル氏による政治介入問題でそのことが鮮明になってます。
どんな世界にもコネの要素はあると思いますが、国連のような国際機関は各国政府から独立していて、ルールもガチガチでは国際問題に対応しづらいから、コネとか推薦が超大事になるという側面もあると思います。
国際機関には国際機関界隈みたいな独特の世界が広がっていて意外と狭い社会なのかも知れないですね。親戚とか多そう。知らんけど。