国家責任条文
国際法における国家責任について定めた国家責任条文は、思い切った論理構成をとる。
国家責任が問題となるのは、例えば日本人がオーストラリアで裁判を拒否されたり、日本の会社がロシアで官民共同の石油採掘事業をしていたところ、突然契約を解除されて損害がでた場合とか、日本のタンカーから石油が流れ出てインドの環境が悪化したりとかいう場合。
ただし、国家責任において主体は国家なので、被害を受けた(たとえば)日本人が相手国になにかしら請求できるわけではなく、自国民が被害を受けた日本国が相手国に違法行為の責任を問えるもの。
国家責任条文の思い切った論理構成というのは、「過失」も「法益侵害」も国家責任の発生要件から排除したことだ。
国家責任条文では
①(条約や一般原則に基づく)国家の国際義務が存在し
②国家が国際義務に違反した行為を行うと、その行為は国際違法行為となる
③国家は国際違法行為の結果として、救済と合法性回復の義務を負う。
という構成になっている。
重要なのは、①における義務とはなんなのかという点だ。過失という心理的要因を、客観的な規則・基準に違反として認定する発想。(過失の客観化)
また、これらの国際義務に違反すると法益侵害が伴うのは当然なので、法益侵害も要件とされない。
国際義務に違反した国際違法行為によって国家は救済と合法性回復の責任を負う。具体的には、原状回復・金銭賠償・精神的満足を行う義務を負う。