グッゲンハイム邸のこと
私の住んでいる塩屋という町に、グッゲンハイム邸という洋館がある。
今から100年ほど前からそこに建つグッゲンハイム邸(通称、グ邸)は10年ちょっと前、解体の危機にあった。
それを塩屋出身のステンドグラス作家が保存のために買い取った。今では音楽イベントのイベントスペースとして活用されている。
その試みが始まった当時、私は中学生だった。
地元のミュージシャンや音大出のクラシック奏者、海外のニッチなミュージシャンなどが来ていたのだが、最近塩屋に戻ってみて驚いた。
今では関西では名の知れたライブ会場になっているようで、私も名前を知っているビッグネームがライブを行うまでになっていたのだった。
たとえば、クラムボンのボーカルとして知られる原田郁子。元キリンジの堀込泰行、大友良英、ハナレグミ、YMOの高橋幸宏、tofubeats、u-zhaan、七尾旅人、青葉市子、大森靖子、stuts、テニスコーツなどなど。
なんとなく方向性がわかる。空気間のあるアコースティック調の質系の音楽という感じ。私はこういう系が好きだから嬉しい。
もともとグ邸は建築そのものやロケーションも魅力的だ。しかし、どんどん有名になっていく今のグ邸の地位は、グ邸の管理人である森本アリさんのこつこつとした活動の積み重ねの結果だと思う。森本アリさんは、グ邸を買い取ったステンドグラス作家の息子さんだ。
先日神戸の元町・三ノ宮界隈のレコードショップを巡ると、どこにでもグ邸のイベントカレンダーを置いてあって驚いた。
このグッゲンハイム邸という洋館は、今から100年ほど前に貿易商のグッゲンハイム氏がこの塩屋の地に立てたものだ。
その後は竹内油業という神戸の会社が買い取り社員寮として使っていたこともあるそうだが、近年は荒れるがままになっていたのだった。
塩屋の海辺にはにはかつて異人館が並び経っていたのだが、戦災、線路拡張、震災、世代交代による売却などで次々と無くなってしまい、残るのは数軒のみだ。
年前にはジョネス邸という和洋折衷の面白い洋館が残っていた。
持ち主だったジョネス家から、最高裁判事を務めた裁判官が買い受け、さらに線路拡張を避けるためわざわざ移築して保存していた。
しかしその後、判事の相続人からデベロッパーが買い取りマンションとなってしまった。当時私も慣れ親しんだ洋館が壊されるのを見て、悲しかった。
ただ一概にデベロッパーに売るのが悪いというわけではない。築100年に迫る洋館を維持する管理費は大変なものだろうし、税金も安くない。また自分の子供に相続する際には相続税も随分かかるのだろう。
自分が近くに生まれ育ったのでなかったら、そこまで思い入れもないだろうし、まとまったお金にかえてすっきりしたいと考えるのは当然だと思う。神戸市か兵庫県に買い取って保存するだけの予算があればと思った。
このジョネス邸についても、グ邸管理人の森本アリさんが中心となって保存活動が行われていたが、デベロッパー側との交渉は実らなかった。