個人としての天皇と概念としての天皇

今上陛下の譲位についてのおことばを受けて、有識者会議が行われてますね。

 

有識者会議では16人中9人が譲位に賛成、7人が反対だそうです。

 

賛否の原因は、天皇の二側面のどちらを重視するかだと思います。

 

一つは、個人、一人の人間としての天皇です。

平成の御世を統べる天皇である、御諱を明仁と仰るあのお方の人生や考えを重視するという考えが一つです。

 

そしてもう一つは、個人の人間性を捨象した、概念としての天皇です。

 

自分の子孫が、大地や天空のようにどこまでも永久に日本を治めるように(天壌無窮)という、

天皇の祖神であり日本人のご先祖さまでもある皇祖 天照大神の意思として、天皇を捉える考え方もあります。

 

一人の人間としての天皇と、天照大神の意思としての天皇、このどちらを重視すべきかという問題です。

 

日本の歴史を紐解くと、これはもう間違いなく後者の概念としての天皇が優先されます。

 

それこそが天皇の存在理由であり、天皇以外の人間ではないことの意味です。

 

だからこそ、歴史上頭おかしいようなヤバイ個人的な資質をもった天皇が実在しても、天皇はなくならないのです。

 

天皇は、二千年もの前から、そして神代の時代から、天照大神につづく歴代天皇の歴史の重みの下に、自らの個人的な好みや欲求は抑えてきました。今上陛下もそうです。

日本の、そして日本人の歴史の全てが自らの上にのしかかるのですから、大変なことです。

 

言ってみれば、個人としての天皇天皇の連綿とした流れである皇統に殉じることが求められるのでしょう。譲位に反対派の保守派論客はこういった考えだと思います。

 

でも私は今上陛下のお気持ちを汲み、皇太子殿下への譲位を実現させるべきだと思います。

 

今上陛下個人のお気持ちを尊重するということもありますが、それ以上に、陛下のお気持ちはむしろ、今後のことに重きを置いてると思います。天皇においても高齢化が進む時代にあっては、譲位がなくては天皇は国民の支持を得られずに現実的な正統性を失ってしまうもしれないという危惧であると思います。

 

先日崩御したタイのプミポーン国王は88歳で崩御、イギリスのエリザベス2世女王は90歳です。我が国の今上陛下は今月で83歳を迎えられます。

 

人間の寿命はますます伸びてます。

去年とか今年とかに生まれた子供は、なんと平均して100歳まで生きるらしいです!

 

天皇の寿命が延びると、並行して皇太子が天皇に即位する年齢も高くなります。

今後の天皇は現行制度のままだと、80歳で天皇に即位し、100歳で崩御するようなことになりかねません。

 

80歳で即位となれば、天皇となってから精力的に活動することは難しいです。

 

神道の思想にあっても、伊勢神宮が二十年に一度全ての建物が作り替えられるように、新しく、若々しく、美しく、すがすがしいものを日本の神々は好みます。

 

現実問題として国民の感情も、すでに健康問題を抱えた80過ぎの老帝が即位するのでは、盛り上がり辛いでしょう。

 

新たな天皇の即位は、新たな時代への希望や期待を感じさせるものであるのが理想です。