外交的庇護

外交使節団が亡命を求められたときにとりうべき措置について論じなさい。

 


1亡命希望者が大使館へ来館して亡命を要求したと考え検討する。
 大使館は、ウィーン外交関係条約および慣習国際法上、接受国の裁判・執行管轄権が原則的に及ばないとされるが、接受国の領域にあることに変わりはない。そして、外交的庇護は、接受国の主権を侵害するものであり、国際法上違法とみなされる。(庇護事件)
 しかしながら、亡命者の保護を拒否し直ちに大使館外への退去を求める対処は、以下の2点において国際法上問題となりうる。


2.政治犯罪人不引き渡し原則に留意する必要がある。政治犯罪人不引き渡しは国家の権利かについて議論はあるものの、人権の主流化した潮流にあっては、不引き渡しは国家の義務であるとする考えが有力であり、自由権規約でも明文化されている。そのため、亡命希望者が政治犯罪人である場合は、接受国に引き渡してしまうと国際法上違法となる可能性がある。

 

3.ノンルフールマン原則に留意する必要がある。難民条約においても「迫害の恐れ」のある難民申請者を本国へ送還することは明確に禁じられており、近年ではこの原則はすでに慣習国際法化したという主張も一定の支持を集めている。

 

4.上記2点の理由から、来館した亡命希望者の措置は、庇護自体違法であるのの、引き渡しも国際法上の問題があることから、 当事国同士の個別具体的な外交交渉に依るところが大きい。