国内管轄事項
ノッテボーム事件をふまえて、「国籍は国内管轄事項である」という命題を論じなさい。
1. いかなる事項が国内管轄事項であるかについては、国際法によって相対的に決定される(相対説)。
聯盟時代のチュニス=モロッコ国籍法事件においてPCIJは、国内管轄事項に関して、「国際法により規律されていない事項であり、国際関係の発展に依存して相対的に決定されるものである」と判示した。
また同事件では、国籍付与は、(当時の)国際法が規律しておらず、それゆえ国内管轄事項であるとも述べられている。
2. 国連体制下でも国内管轄事項の判断に関しては、相対説が該当するとされる。
ICJはノッテボーム事件において、チュニス=モロッコ国籍法事件を踏襲し、国籍付与自体は国内管轄事項であるとした。
その上で、国籍付与によって生じる国際法上の効果のうち、外交的保護権の行使に関して検討を加えている。
そこでは、まず外交的保護権の他国に対する行使が認められるか否かは、対抗力の問題であることが示された。
さらに他国に対して対抗力を有するか否かは(国内管轄事項ではなく)国際法の決するところであるとし、その判断基準は「真正な結合」の有無によるとした。
3. 従って、国籍の付与それ自体は国内管轄事項だが、国籍付与によって生じる国際法上の効果に関してはその限りではない。 以上