台湾総統選

久しぶりの更新。

おととい行われた台湾の総統選、そして立法委員(国会議員)選挙は歴史的な結果となった。民進党蔡英文が大差を持って総統に当選し、立法院でも民進党が単独で過半数を優に超えた。

おとといの夜に用事で後楽園のサイゼリヤでミーティングしていると、後ろのテーブルで10人ほどの中高年の男女がPCで台湾総統選の実況映像を流していた。民進党の応援のため集っていたようで、民進党のTシャツを着た人、それになぜか日の丸ハチマキをしめた人も居た。気持ちは分かるけど。大変盛り上がっていて、結果が出る前にお店を出たけれど、あの人たちはきっと民進党の大勝に歓声を上げたに違いない。

 

数年前に台湾へ行く機会があった。国民党と民進党の両党の本部を訪問させてもらい、李登輝元総統とお会いできたことは本当にいい経験だった。台湾の若者たちは本当に政治に対する意識が高く、見習わなければならないなと感じた。台湾にあっては選挙結果で本当に国がなくなってしまうので、一票の重さも格別だ。

 

外国人の私がどうこういうものでもないけれども、心情的にはやはり民主進步黨(民進党)を応援していた。新総統の歩む道は過酷な道で有ろうことは想像に難くないが、がんばってほしいと思う。今回の選挙では、2014年に台湾の立法院(国会)を選挙した若者の学生運動「太陽花學運(ヒマワリ学生運動)」を機に結成された新党「時代力量」が大きな存在感を示した。このことに関連して最も驚いたことは、台湾のブラック•メタルバンドChthonicのフロントマン、”フレディ•リム”こと林昶佐が立法委員に時代力量から当選したことだ。Chthonicはアジアを代表するメタルバンドといっても過言ではなく、日本にもラウドパークやオズフェスとといったメタルフェスでたびたび来日している。私がこのバンドを知ったのは、2011年の『高砂軍』をリリースしたときだった。当時のタワレコHMVのメタルコーナーで大きく取り上げられ、地元のHMVでCDを試聴した。

Takasago Army

Takasago Army

 

 三曲目のTakaoの、力強く歌い上げられるサビは心を打つものが有った。そもそもこのアルバムタイトル『高砂軍』は、第二次大戦末期の台湾原住民の部隊、「高砂義勇軍」を意味している。台湾には南洋系の原住民が居て、漢民族とは全く別個の文化を有していて、戦前は諸部族を総称して「高砂族」と称された。誇り高く勇猛で、密林に慣れた彼ら高砂族による「高砂軍」は日本人兵士が苦戦したフィリピンやニュ—ギニアで活躍した。しかし日本の敗戦によって他の台湾人日本兵同様、日本政府から棄民されてしまったと言っていいだろう。Takaoはその高砂軍を歌った歌である。いろいろ歴史的なことを書いてしまったけれど、とにかく曲が素晴らしいので(PVも)一聴に値する。

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そして7曲目、Broken Jade。この曲は素晴らしい。同様に第二次大戦を歌った曲だが、壮重なリフから始まり痛切な戦争の悲哀がデスヴォイスで歌い上げられる。そしてなによりも、曲の後半で突如挿入される、玉音放送。こんなにかっこよく使われるとは驚きだ。初めて聞いた2011年の夏の衝撃は今も覚えている。

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日本的なテーマを多く用い、一見「親日」的に思えるが、日本人の目で単純に「親日」というイデオロギーでChthonicは捉えられるものではない。これ以前にChthonicは霧社事件(台湾原住民による最大の抗日暴動事件)をテーマにした作品も発表している。

 

台湾、また行きたい。